「人工(にんく)の請求書って、どう書けばいいの?」「元請けから協力会費を引かれて入金されたけど、帳簿はどうする?」——一人親方の請求書は、会社員向けの一般的な請求書の解説ではカバーされない独特のルールがあります。
この記事では、一人親方・職人の方向けに、常用(人工)と請負(一式)の2つの書き方を見本付きで解説します。インボイス制度の記載事項、駐車場代などの立替、入金で差し引かれる協力会費・振込手数料の記帳までまとめました。
① 先に、元請けに「指定の請求書」や「支払通知書」があるか確認。あれば自分で一から作らなくてよいことが多い
② 常用は「人工 × 日当」、請負は「一式」。半日は0.5人工
③ 協力会費・振込手数料を差し引かれても、売上は請求額のまま。差し引かれた分は経費などで記帳する
まず確認:元請けに指定の請求書・支払通知書はある?
ゼネコンや大きな工務店と取引する場合、元請け側が請求書の様式を決めていることがよくあります。書き方を調べる前に、次の3つのどれに当たるかを確認しましょう。
| 元請けのやり方 | 一人親方がすること |
|---|---|
| 指定の請求書(様式・Webの請求システム)がある | その様式に記入・入力する。締め日と提出期限を守る。登録番号の欄があれば忘れずに書く |
| 元請けが「支払通知書」を作って送ってくる | 中身(日数・金額・税率・自分の登録番号)が合っているか確認し、違っていればすぐ連絡する。届いた通知書は控えとして保存する |
| 特に決まりがない | 自分で請求書を作る(この記事の見本を参考に) |
2つ目の「支払通知書」は、買い手(元請け)が作った書類を売り手(一人親方)が確認することで、元請けが消費税の控除に使える仕入明細書の方式です。この方式の場合、一人親方が別に請求書を出すかどうかは元請けとの取り決めによります。「一定期間内に連絡がなければ内容を確認したものとする」という取り決めも多いので、届いたら放置せず中身を見ることが大切です。
請求書に書くこと(インボイスの記載事項)
インボイス登録している一人親方が出す請求書には、次の6つが必要です(適格請求書の記載事項)。手書きでもExcelでも、そろっていれば有効です。
| 記載事項 | 一人親方の書き方 |
|---|---|
| ① 発行者の氏名(屋号)と登録番号 | 「T」+13桁の番号 |
| ② 取引年月日 | 月まとめの請求なら「2026年10月分」のような期間でよい |
| ③ 取引の内容 | 「○○邸 新築工事 大工手間(常用)」「○○様邸 内装工事 一式」など |
| ④ 税率ごとに合計した金額と税率 | 工事は通常すべて10%。「10%対象 ○○円」 |
| ⑤ 税率ごとの消費税額 | 請求書1枚につき、税率ごとに1回だけ端数処理する |
| ⑥ 宛名(元請けの名称) | 「株式会社○○工務店 御中」 |
工事の代金は源泉徴収の対象になる報酬に含まれないため、一人親方の請求書に源泉徴収の欄は要りません(設計・監理の報酬は対象。建築士の確定申告を参照)。請求書全般の書き方は請求書の書き方にもまとめています。
登録番号は書けません(登録していないのに登録番号に見える番号を書くことは禁止されています)。登録番号のない請求書では、元請けは消費税を一部しか控除できない(経過措置)ため、単価の話になることがあります。登録するかどうかの考え方は一人親方の確定申告ガイドの消費税の章を参照してください。
常用(人工)の請求書の書き方【見本】
常用(じょうよう)は、日数で働いた分を請求するやり方です。1人が1日働く作業量を1人工(にんく)と数え、「人工数 × 日当(人工単価)」で計算します。
| 品目 | 数量 | 単価 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 大工手間(常用)10/1〜10/31 | 18.5人工 | 22,000 | 407,000 |
| 残業(10/15・10/22 各2時間) | 4時間 | 3,500 | 14,000 |
| 現場駐車場代(実費相当) | 1式 | 6,000 | 6,000 |
| 10%対象 小計④ | 427,000 | ||
| 消費税(10%)⑤ | 42,700 | ||
| ご請求金額 | 469,700 | ||
- 半日は0.5人工。月の合計が18.5人工のように小数になっても構いません。
- 日付ごとの内訳(出面表)を別紙で付けると、元請けの確認が早く、入金が遅れにくくなります。
- 残業・早出は、取り決めた単価があれば別の行に分けます。
- 入力する欄の数量が整数しか受け付けない請求書ソフトでは、品目に「大工手間 18.5人工」と書き、数量1・単価に合計額(407,000円)を入れれば同じ意味になります。インボイスの記載事項に数量・単価は含まれないので、どちらの書き方でも問題ありません。
請負(一式)の請求書の書き方【見本】
請負は、工事全体をいくらで請けるかを決めて請求するやり方です。見積書の内容に合わせて「一式」で書きます。
| 品目 | 数量 | 金額 |
|---|---|---|
| 内装工事(クロス張替え・床CF張り) | 1式 | 380,000 |
| 材料費(クロス・CF・副資材) | 1式 | 95,000 |
| 追加工事(巾木交換・10/14ご依頼分) | 1式 | 25,000 |
| 10%対象 小計 | 500,000 | |
| 消費税(10%) | 50,000 | |
| ご請求金額 | 550,000 | |
- 材料費は工事と分けて書くと、見積との照合がしやすくなります。工事代に含めて一式でも構いません。
- 追加工事は別の行に、いつ誰に頼まれたかを書いておくと、後で揉めにくくなります。
- 期間の長い工事で、進み具合に応じて請求する(出来高請求)場合は「出来高 ○%」と書きます。受け取ったお金をいつの売上にするかは契約の内容で変わるので、年をまたぐときは年をまたぐ工事の扱いもあわせて確認してください。
- 材料を元請けが無償で支給し、自分は手間だけを請ける場合は、材料費の行はありません。この「手間請け」は、簡易課税では第4種(みなし仕入率60%)になります。
駐車場代・高速代はどう書く?(上乗せと立替金)
現場の駐車場代や高速代を元請けに払ってもらう方法は2通りあります。
| 方法 | 書き方 | 帳簿での扱い |
|---|---|---|
| 工事代に上乗せ | 「現場駐車場代 6,000円」として他の行と同じく請求する(上の常用の見本) | 売上(消費税の対象)。払った駐車場代は自分の経費 |
| 立替金として精算 | 元請けの代わりに払ったものとして、領収書を付けて実費だけを別に精算する | 売上にも経費にもしない(立替金) |
迷ったら、上乗せのほうが簡単です。立替金にするのは、元請けとそう取り決めている場合です。インボイス制度のもとで立替金を精算するときは、元請けが消費税の控除を受けられるよう、領収書のコピーと立替金の精算書を渡す形になります。
入金で差し引かれる協力会費・振込手数料の記帳
元請けによっては、支払いのときに安全協力会費や振込手数料を差し引いて振り込んできます。請求額と入金額が合わないので戸惑いますが、売上は請求額のままにして、差し引かれた分を別に記帳します。
・安全協力会費 1,400円 → 諸会費などの経費
・振込手数料 670円 → 支払手数料(または売上値引)
・売上は 469,700円 のまま(入金額の 467,630円 を売上にしない)
- 協力会費:経費(諸会費など)にするのが一般的です。消費税の対象になるかどうかは会の中身によって変わるので、元請けの案内(明細や通知書)を確認してください。
- 振込手数料:支払手数料として経費にするか、売上値引として処理します。国税庁のQ&Aでは、売上値引として処理すれば、1万円未満なら返還インボイス(値引きの書類)を出さなくてよいと案内されています。支払手数料として処理する場合は、金融機関や取引先からのインボイスが必要になります。
- 入金額で売上を記帳すると、差し引かれた分だけ売上が少なく出て、経費も漏れます。請求額と入金額の差を毎回分けて記帳するのが、帳簿を合わせるコツです。
締め日・取引年月日・控えの保存
- 締め日:元請けの締め日(月末締め・20日締めなど)に合わせて請求書を出します。締め日を過ぎると支払いがひと月遅れることがあります。
- 取引年月日:月まとめなら「10月分」、締め日が20日なら「9月21日〜10月20日」のように期間で書きます。
- 控えの保存:インボイス登録している人は、出した請求書の控え(写し)を7年間保存します。手書きなら複写式、Excelや請求書ソフトならPDFで残しておきましょう。
AiXcelで請求書を作る
AiXcelの請求書は、無料プランを含む全プランで使えます。インボイスの記載事項に対応したPDFを作れます。
- 登録番号・屋号は設定に一度入れておけば、毎回自動で入ります
- 取引年月日の欄があり、空のまま保存しようとすると保存の前に知らせます
- 見積書・納品書から請求書に変換でき、毎月の常用の請求は前月分を複製して日数と金額だけ直せます(取引年月日は複製しないので、先月分のまま出す心配がありません)
- 請求書から売上(売掛金)を記帳する設定にすると、銀行明細を取り込んだときに入金と突き合わせ、1,100円までの差は振込手数料として記帳します
- 数量は整数で入力します。0.5人工がある月は、品目に「大工手間 18.5人工」と書いて数量1・単価に合計額を入れてください
確定申告の全体(経費・青色申告・消費税)は一人親方の確定申告ガイドにまとめています。
よくある質問
人工(にんく)とは何ですか?半日働いた日はどう書きますか?
1人が1日働く作業量を1人工と数えます。常用の請求は「人工数 × 日当」で計算し、半日は0.5人工です。月の合計が18.5人工のように小数になっても構いません。数量に整数しか入らない請求書ソフトでは、品目に「18.5人工」と書いて数量1・単価に合計額を入れれば同じ意味になります。
元請けから支払通知書が届きます。請求書は出さなくていいですか?
元請けが作った支払通知書を一人親方が確認する「仕入明細書」の方式なら、別に請求書を出すかどうかは元請けとの取り決めによります。いずれの場合も、届いた通知書の日数・金額・税率・自分の登録番号が合っているかを確認し、違っていればすぐに連絡してください。一定期間内に連絡がなければ確認したものとする取り決めも多いため、放置しないことが大切です。
手書きの請求書でもいいですか?
記載事項(登録番号・取引年月日・内容・税率ごとの金額と税率・消費税額・宛名)がそろっていれば、手書きでも有効です。インボイス登録している人は出した請求書の控えを7年間保存する必要があるので、複写式を使うか、写真やスキャンで残しておきましょう。
協力会費を差し引かれて入金されました。売上はいくらにしますか?
売上は請求額のままにして、差し引かれた協力会費は経費(諸会費など)として記帳するのが一般的です。入金額を売上にすると、売上が少なく出るうえに経費も漏れます。消費税の扱いは会の中身で変わるので、元請けの案内を確認してください。
振込手数料を差し引かれたときは、どう処理しますか?
支払手数料として経費にするか、売上値引として処理します。国税庁のQ&Aでは、売上値引として処理すれば1万円未満なら返還インボイスを出さなくてよいと案内されています。支払手数料として処理する場合は、金融機関や取引先からのインボイスが必要です。
インボイス登録していない一人親方は、どんな請求書を出せばいいですか?
登録番号以外の項目(氏名・取引年月日・内容・金額・宛名)を書いた請求書を出します。登録していないのに登録番号に見える番号を書くことは禁止されています。登録番号のない請求書では元請けが消費税を一部しか控除できない(経過措置)ため、単価について元請けと話し合いになることがあります。